訪問看護という業種は広く知られるようになりましたが、具体的にどのような仕事をしているのか知らない方もいらっしゃいます。
私は訪問看護ステーションに就職する前には、看護学生での実習時に体験した訪問看護のイメージが強くありました。
「ゆっくりと仕事している」、「重症度の高い患者さんは少なく、健康チェックがメインである」といったイメージを抱いている方も少なくないようです。
しかし、実際に働いてみると訪問看護の仕事というのは多岐に渡り、イメージしたような容易なものではありませんでした。
その反面、一つ一つの目標や課題を達成した時の喜びは大きくやりがいのある仕事であるとの実感しています。
今回は、訪問看護師の仕事内容について前編・後編に分けて詳しく解説していきます。
今後訪問看護への就職を検討されている看護師さんは、ぜひ参考にしてください。
訪問看護師の仕事内容とは?
訪問看護師の仕事内容は、以下のようなものがあります。
- 病状の観察
- 病状コントロールにおける管理、指導
- 医療的な管理や処置
- 清潔ケア
- 家族介護指導
- 医療機関との連携
- 医療介護連携
- 緊急時の対応
- 終末期の看取りのケア
- 各種書類作成
- 事業所の維持向上に向けた取り組み
- 利用者獲得に向けた営業活動
- 研修の受講
このように、一言に訪問看護と言っても業務内容は利用者さんによって異なります。
利用者さんに必要な看護を抽出し、提供する必要があるためアセスメントは重要になります。
病院や施設と同じように看護計画を立案し、看護を提供した後にはその計画が妥当性の高いものであるか評価し場合によっては計画を修正します。
では、各項目の具体的な仕事内容について解説していきます。
病状の観察
訪問看護では、一人の利用者さんに必ず一人の主治医が存在します。
その主治医から交付された訪問看護指示書に基づき訪問看護を提供します。
訪問看護指示書には利用者さんの主疾患や既往歴、現在の治療内容や療養上の留意点が記載されます。
バイタルサイン測定やフィジカルアセスメントを用いて疾患における病状の観察を行い、体調の悪化がないかアセスメントします。
特に高齢の利用者さんは複数の疾患を抱えている場合があり、また症状が現れにくいことや認知症症状により表出しにくいこともあります。
そのため、本人からの情報収集に加え家族や介護職員などから訪問日以外の状態の情報を得ることもあります。
病状コントロールにおける管理、指導
在宅療養を行う上では、各疾患の症状コントロールが重要です。
呼吸器疾患や循環器疾患、内分泌疾患、脳神経疾患など症状を内服薬、貼付剤、注射、吸入薬などで治療している方がいます。
服薬類の管理だけでなく、必要な栄養指導や運動療法も取り入れて日常生活をサポートします。
また、定期的な観察により異常の早期発見をすることができるため、主治医に報告して早期に治療が開始できれば入院に至らず在宅療養を継続することが可能です。
このように、病気を抱えていても症状を安定させて過ごすことができるよう訪問看護師が支援しています。
医療的な管理や処置
訪問看護をご利用いただく方の中には、医療的な管理や処置が必要になる方もいます。
点滴や膀胱内などのカテーテル留置をしている方や在宅酸素療法を行っている方、ストマの管理や必要な方、褥瘡の処置が必要な方、気管切開をしている方、人工呼吸器を使用している方など様々です。
訪問看護では病院や施設と同じように、上記のような医療的な機器の管理や処置をしています。
事業所で統一した看護技術の提供をするため、必要時には事業所内研修や同行訪問を行います。
清潔ケア
病状の変化によりADLの低下がある場合には、自立した保清が困難になることがあります。
その際には訪問看護師が清潔ケアを行っています。
自宅の浴室をお借りして入浴やシャワー浴の介助を行うこともあれば、ベッド上での清拭や足浴、洗髪、陰部洗浄を行うこともあります。
爪切りや保湿も必要時には行います。
病院や施設のように物品が整っているわけではないため、利用者さんの持ち物をお借りして工夫しながらケアを提供しています。
家族介護指導
訪問看護は利用者さんの状態により訪問頻度が異なります。
体調が落ち着いている利用者さんであれば、週に1回から2回程度の訪問が多いです。
また、1回の訪問時間は30分から1時間がメインです。
そのため、訪問看護師が訪問している時間以外は家族や訪問介護の介入により介護を行っている場合が多くあります。
また、介護をする家族も利用者さんと同様に高齢であることも少なくないため、介護者の無理のない方法で介護を行っていく必要があります。
排泄ケアや食事介助など安全で安楽な介護を継続していただくために、家族でも対応可能な介護方法や工夫点をお伝えしています。
時には膀胱留置カテーテルの管理や、経管栄養の実施、吸引の実施など日常生活では関わることのなかった医療的な手技を家族に習得していただくこともあります。
訪問看護では、家族の状況に合わせてわかりやすく安全に介護や医療的な手技を取り入れられるよう支援していく必要があります。
医療機関との連携
利用者さんの体調変化や症状のコントロール不良がある場合には、訪問看護を交付している主治医やかかりつけの医療機関に連絡報告をして指示を確認します。
必要な場合には定期受診を早めて診察をしていただくことや、急変時には緊急搬送をすることもあります。
このように、訪問看護師は医療機関との連携を密に行い、在宅で療養する利用者さんの状況を迅速に共有して対応します。
地域の医療機関は、大学病院や総合病院などの大きな施設からクリニック、訪問診療まで形態が様々です。
医療機関ごとに連絡方法や受付窓口が異なることもあり、訪問看護師は臨機応変に対応していく必要があります。
医療機関との連携は、訪問看護に慣れるまでは難しい仕事と言えます。
医療介護連携
訪問看護師は、医療機関との連携だけではなく利用者さんを担当しているケアマネジャーの方やそのほか介護保険サービスとの架け橋の役割もします。
医療介護連携を図ることができると、利用者さんにとってシームレスなサービスの提供に繋がります。
状態があまり良くない利用者さんへの介護の提供を行う介護士さんは、不安も大きいと伺います。
連携のとりやすい訪問看護師は、介護保険サービスを提供する介護士さんからも頼りになる存在です。
まとめ
今回は、訪問看護師の仕事内容について前編を解説しました。
訪問看護の仕事は文頭でお伝えした通り、多岐に渡ります。
訪問看護の仕事に就いて初めて実践する業務も多いと感じたのではないでしょうか。
入職後に業務の多さや先輩訪問看護師の身のこなしに驚いてしまう看護師さんも少なくありません。
しかし、慌てずに一つずつ習得していくことができれば、看護師としてこれまで以上に活躍できると思います。
当社では、訪問看護未経験の看護師さんも安心して働けるよう研修制度を充実させてお待ちしています。
少しでも訪問看護に興味をお持ちになった看護師さんは、ぜひ見学に来てみてくださいね。
では、引き続き「訪問看護師の仕事内容とは?【後編】」も参考にしていただければ幸いです。