在宅医療の現場でも、病院や施設と同じく点滴や注射での治療を行います。
在宅での看護経験がない看護師さんは、上記のように疑問を持たれる方もいるのではないでしょうか。
今回は、訪問看護の点滴の実際について前編後編に分けて詳しく解説します。
「訪問看護で働いてみたいけど、どんな仕事をしているか想像できなくて不安。」という看護師さんも、この記事を読んでいただけるとイメージが湧くと思います。
訪問看護に興味のある看護師さんは、ぜひ参考にしてください!
訪問看護の点滴の実際とは?
訪問看護では、在宅医療の需要増加に伴い点滴治療の実施も増えています。
実際に行う医療処置の中で、点滴は下記の表のような割合で行われています。
令和4年度厚生労働省委託事業在宅医療関連講師人材養成事業研修会「各論④在宅ケアにおける訪問看護の役割〜医師との連携〜」より引用
在宅では、基本的には体調を維持するために服薬での治療を行うことが多いです。
しかし、体調の変化や病状に応じて点滴の実施が必要になることもあります。
在宅での点滴治療は、主に以下のような状態の時に実施します。
では、訪問看護の点滴実施の際には、どのようなポイントがあるのでしょうか。
訪問看護の点滴実施の際のポイントとは?
在宅での点滴は、病院や施設と同様に主治医の指示のもとで実施します。
点滴の作成や滴下数の確認の手技は、病院等で行っているものと変わりありません。
訪問看護では点滴実施の際に病院等と異なるのは、主治医からの指示書交付の流れと加算の算定の有無、病状や介護状況、療養環境に合わせた工夫の必要性です。
次の項から具体的に解説していきます。
訪問看護で点滴をする場合には主治医の指示書交付が必要
訪問看護で週に3回以上の点滴を実施する際には、「在宅患者訪問点滴注射指示書」の交付が必要です。
この在宅患者訪問点滴注射指示書は、指示期間が7日以内と定められています。
在宅患者訪問点滴注射指示書には、点滴の種類や投与方法、留意事項などが記載されます。
点滴を実施する際には、この在宅患者訪問点滴注射指示書を十分に確認して行います。
ただし、週3回に満たない点滴の場合や中心静脈栄養法の場合には、通常の訪問看護指示書に投与方法等を記載していただくこととなっており、在宅患者訪問点滴注射指示書の交付は不要です。
利用者さんの自宅で点滴を実施する際にも、在宅患者訪問点滴注射指示書を見て薬剤の確認を行います。
事前に必要な確認項目(利用者氏名、薬剤の内容、薬剤の用法用量、投与方法、投与時間、投与目的)を確認しておくと良いでしょう。
投与方法等に不明点がある場合には、必ず主治医に確認し、自己判断での点滴実施をしないよう注意します。
点滴の衛生材料は医療機関から支給される
点滴に必要な物品は指示書を交付する医療機関から支給してもらいます。
使用する物品は病院や施設で行う点滴と同様に、輸液セットや延長チューブ、サーフロー針、アルコール綿、テープ類です。
点滴実施前に物品の不足がないか確認しておきます。
点滴材料は利用者さんの居宅に届けられることもあり、確認は実施時に現地で行うことも多くあります。
そのため、物品の不足や不備により予定通り実施できないことも予測されます。
訪問看護師は、テープ類やアルコール綿など予備として持っておくと万が一の時に役立ちます。
算定要件に当てはまる場合は特別管理加算を算定する
訪問看護で点滴を行う際、算定要件に当てはまる場合には加算を算定することができます。
介護保険での訪問看護利用の場合には、点滴実施の内容により「特別管理加算Ⅰ」または「特別管理加算Ⅱ」を算定します。
持続的に点滴を行う場合や、サーフローを留置して管理する場合には「特別管理加算Ⅰ」に該当します。
週に3日以上の点滴注射を行う場合には「特別管理加算Ⅱ」に該当します。
算定要件を確認し、加算の算定漏れがないように注意します。
まとめ
今回は、訪問看護の点滴の実際について解説しました。
在宅での点滴実施は、さまざまな準備や確認が必要です。
訪問看護は基本的に利用者さんの居宅に看護師が一人で伺い、看護を提供しています。
そのため、点滴治療時の薬剤の用量や方法を間違えてしまわないよう注意が必要です。
訪問看護で行う点滴は、静脈注射点滴、皮下点滴、中心静脈栄養法の3種類があります。
【後編】では、その3種類の点滴について詳しく解説していきます。
引き続き参考にしていただければ幸いです。