訪問看護が関わる在宅看取りの件数は、年々増加傾向にあります。
特にコロナウィルス感染が広がり、医療機関での入院時の面会制限が設けられた以降は在宅での看取り件数が大幅に増加しています。
では、訪問看護での看取りはどのような支援を行っているのでしょうか。
今回は、訪問看護の看取りの実際について詳しく解説します。
これから訪問看護への就職を検討している看護師さんは、ぜひ参考にしてください。
訪問看護の看取りの実際とは?
令和5年11月6日に厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会が示した「訪問看護(改定の方向性)」の資料によると、訪問看護でのターミナルケア利用者数は以下のように増加しています。
ターミナルケア加算またはターミナル療養費を算定する利用者さんは、亡くなる14日以内に訪問看護を一定回数利用しています。
また、在宅で看取りを行った場合及び在宅以外で24時間以内に死亡した場合を含みます。
医療機関等で最期の24時間以内を過ごした場合も含めこの加算を算定していますが、ほとんどの終末期の療養期間を在宅で過ごした利用者さんであると言えます。
表に示された通り、令和3年度からは在宅でのターミナルケアが急増しています。
このように、在宅で最期の療養期間を過ごす利用者さんが増え、訪問看護師による終末期の支援は需要が高いことがわかります。
では、訪問看護での看取りの関わりは、具体的にどのようなことが行われているのでしょうか。
訪問看護で死亡前14日間に実施したケアの内容とは?

「訪問看護(改定の方向性)」の資料によると、訪問看護で死亡前14日間に実施したケアは以下の3項目が上位に上がります。
- 清潔援助
- 家族の療養指導
- 排泄管理
訪問看護の現場では、具体的にどのような支援を行っているのでしょうか。
次項より詳しく解説していきます。
清潔援助

終末期にある利用者さんは、徐々にADLが低下し寝たきりに近い状態になる方も多くいます。
そのため、全身状態に配慮しながら看護師が清潔援助を行います。
全身清拭や陰部洗浄を行い、十分な保湿を行うことで皮膚障害の発生を予防します。
また、食事量や飲水量が低下した利用者さんは、口腔内の乾燥や汚染も強くなります。
口腔内汚染による誤嚥を予防するため、口腔ケアも大切な介入の一つです。
利用者さんが安楽に過ごせるよう支援していきます。
家族の療養指導

在宅での看取りを希望していても、利用者さんの状態が変わっていく様子を見守る家族は精神的にも負担が大きくなります。
特に最期の数週間、数日間は家族の不安も強くなり「このまま家にいることが本人にとって良い選択なのだろうか。」と悩んでしまう方も少なくありません。
最期の療養に対する気持ちの揺らぎは、大なり小なり生じるものです。
訪問看護師は利用者さんや家族が後悔のない意思決定ができるよう情報提供を行います。
また、訪問看護師は、家族の不安を少しでも軽減できるよう関わります。
今後起こりうる症状や変化について家族が理解しやすい表現で説明し、主治医と共に利用者さんの苦痛を除去して過ごせるよう支援します。
排泄管理

病状の進行により排泄行動が困難となることがあります。
薬剤の使用が増えると、排便コントロールが必要となることも少なくありません。
訪問看護師は、体調に合わせた排便コントロールを図り苦痛を除去する関わりを行います。
積極的な経口摂取が困難となり、下剤の服用が難しくなることもあるため浣腸や摘便での支援を行うこともあります。
また、数日前までトイレ歩行が可能であった利用者さんが、寝たきりとなりオムツの使用が必要となった場合には家族への介護指導を要することもあります。
家族の負担が大きくなりすぎないよう排泄管理を行います。
このほかにも、医療用麻薬を使用して疼痛コントロールをしたり主治医の指示のもと点滴による治療を行うこともあります。
医療用麻薬の使用については、服薬、貼付薬、座薬、点滴注射など方法が多岐に渡ります。
訪問看護師は、疼痛緩和についての知識や技術を持っておくことも重要です。
訪問看護での最期の関わりとは?

いよいよ利用者さんの呼吸状態や意識レベルの悪化が見られると、家族の不安も高まります。
訪問看護師は前項で記載したように利用者さんが安楽に過ごせるよう支援し、家族の不安に寄り添い見守ります。
現代では看取りに向けて補液を行うことはあまりおすすめしない医療機関が増えてきました。
利用者さんの最期の一呼吸まで、自然な形で見守ることが多いです。
呼吸停止の際には、慌てずに訪問看護にご連絡いただけるよう家族に説明します。
呼吸停止のご連絡をいただいた際には、すぐに看護師が訪問し状態確認をして主治医に報告します。
主治医の死亡確認が行われた後に、訪問看護師は死後の処置(エンゼルケア)を提供します。
これまでの療養や治療を労い、全身をきれいに保清し更衣します。
死後の処置には家族も参加していただくことも多く、利用者さんとの思い出話や介護を行う上での苦労を共有しながら穏やかな時間を持つことができます。
終わりに
今回は、訪問看護の看取りの実際について詳しく解説しました。
在宅での看取りは、病院や施設での看取りとは異なる難しさがあります。
しかし、家族と共に利用者さんが安楽に過ごせるよう症状コントロールし、最期の一呼吸までを見守ることができると、訪問看護師としても大きな経験となります。
日本看護サービスでは、多くの利用者さんの看取りに関わることで事業所としての学びをたくさんいただきました。
これから訪問看護で働き利用者さんに看取りに関わる看護を提供してみたいと考えている看護師さんは、ぜひ見学にいらしてください。
あなたからのご連絡を、こころよりお待ちしています。