訪問看護で勤めていますが利用者さんとのコミュニケーションに悩んでいます。
どうしたらうまく行きますか?
訪問看護の仕事をする中で、このように悩んでいる看護師さんやセラピストさんは少なくないのではないでしょうか。
訪問看護では利用者さんの居宅に看護師一人で伺い、必要な看護を提供します。
どのようなことに困っているのかを聴取するためにも、コミュニケーション技術は重要なスキルと言えます。
今回は、訪問看護の現場でよくあるコミュニケーションにおける悩みとその解決策について解説していきます。
訪問看護の現場でコミュニケーションに悩みを抱えている看護師さんやセラピストさんはぜひ参考にしてください。
訪問看護でのコミュニケーションで抱える悩みとは?
訪問看護は前項で述べたとおり、看護師一人で利用者さんの居宅に伺い看護を提供しています。
主に30分から60分の間、看護師と利用者さんは1対1の関わりとなります。
そんな中でよく聞く悩みには以下のようなものがあります。
- 利用者さんとの会話が続かない
- 利用者さんの想いを聞き出すことができない
- 利用者さんとの会話が長引いてしまい訪問時間を超過してしまう
この記事を参考にしてくださっている皆さんの中にも、同じように悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
私が訪問看護事業所に初めて入職した時にも、同じような悩みを抱えていたことを思い出します。
では、このような悩みを解決するにはどのような方法があるのでしょうか。
次項より事例とともに詳しく解説していきます。
利用者さんとの会話が続かない
Aさんは契約当初から言葉数が少なく、表情も堅いため訪問看護師はなんだか怖い印象を抱いていました。
定期訪問が開始し、なんとか会話を続けようと色々な話題で声かけをしましたが会話はすぐに終わってしまいました。
そのような繰り返しで、訪問看護師は自身のコミュニケーション能力が低いと悩んでしまうようになりました。
利用者さんとの会話が続かず悩んでしまうことは、訪問看護の現場ではよくある場面です。
会話が続かないことに悩む看護師さんは、周りの様子をよく見て気を遣うことができる真面目な性格の方であると思います。
同行訪問の際に利用者さんと会話が盛り上がる先輩訪問看護師の姿や、コミュニケーションが活発にできる他の利用者さんと比較してしまっていることも多いのではないでしょうか。
このような場合には、無理に会話を盛り上げようとせず、利用者さんの状況を十分に観察しましょう。
- 緊張しているのかもしれないな
- 人見知りなのかもしれない
- どこか具合が悪くて話す気分になれないのかも
- うまく聞き取れなかったのかもしれない
- 話すテンポが速すぎたかもしれない
- 他人が家に上がること自体を好まない人なのかもしれない
上記のように、利用者さんはさまざまな理由で会話ができない状況である可能性もあります。
コミュニケーションを図るときには相手の返答を待つ姿勢を大切にします。
また、言葉だけでなく表情や身振りにも着目して相手の様子から声にならない声を聴きます。
利用者さんと会話が続かないときには、無理に広い話題を降り続けるのではなく、目の前にある状況を会話のきっかけにしてみるといいでしょう。
例えば、利用者さんの生活する環境で周辺にある小物などから「○○がお好きなのですか?」「○○を大切にされているのですね。」とお話ししてみてもよいと思います。
大切なのは、利用者さんの言葉を急かさず、また遮らずに待つことです。
無理に会話を続けなくても構いません。
訪問の際には利用者さんの表情や距離感を前回の訪問時と比較して、変化を読み取ってみましょう。
もし何か少しでもお話しくださったのであれば、「お話しくださってありがとうございました、また伺いますのでどうぞよろしくお願いいたします。」と笑顔で感謝の気持ちを述べましょう。
また、次回の訪問時にはお話ししてくださった内容を覚えておき「この間お話しくださった○○、私も調べてみました。とても興味深い内容でした。」と会話のきっかけを作りましょう。
話したことを覚えていてくれることは、利用者さんにとっても嬉しく感じると思います。
きっと少しずつ、利用者さんとの距離を縮めることができますよ。
- 利用者さんの生活する環境の中で会話のきっかけになるものを探す
- 利用者さんの言葉を急かさず、遮らずに待つ
- 話してくださったことに感謝の意を示す
- 話した内容は覚えておく
利用者さんの想いを聞き出すことができない
Bさんは家族と同居しており、ターミナル期であることを宣告され在宅療養をおこなっています。
状態が変わっていく中で、Bさんの希望に沿った療養を支援したいと考えています。
しかし、最期の療養場所について訪問看護師はなかなかお話しするきっかけが持てずBさんの希望を聴取することができません。
利用者さんの想いを聴取するタイミングがつかめず、世間話で訪問時間が過ぎてしまい悩んでしまう訪問看護師さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
特に人生最期の療養場所ともなれば、なかなか希望を聴くのにも勇気がいる場面であると感じます。
上記のような場合は、利用者さんがリラックスできる環境を作ることが大切です。
症状コントロールがつかず痛みや嘔吐、発熱などの症状がある場合にはリラックスしてお話しすることが難しいこともあります。
まずは主治医と共に症状コントロールを十分に行い、これからの自身の希望を考えられるよう支援していく必要があります。
可能であれば予測される症状が出現する前に、落ち着いて話すことができるようきっかけを作ることができれば尚いいですね。
最期の話を言い出せない看護師さんにとって、「あなたはどこで死にたいですか?」と聞くのはハードルが高いです。
私なら、足浴や入浴をしながらゆったりとした雰囲気の中で、「いつか最期の日が来るとして、誰とどんなふうに過ごしたいですか?」「家族に迷惑をかけたくないとお話しする方が多いですが、その悩みが解消する場合には家でこのまま過ごすことを希望しますか?」と問いかけます。
死ぬことを直接イメージしてもらうのではなく、死ぬまでの日をどこでどうやって過ごしたいかを問うのです。
このように、色々な場面で利用者さんの想いを聴取したいときには、結果ではなく過程を聴いてみることをお勧めします。
私の経験の中では、足浴をしながらお話を伺うとリラックスできてお互いに話しやすい雰囲気が作れました。
みなさんもぜひお試しくださいね。
- 予測される症状が出現する前に話をする環境を作る
- 症状がある場合、症状コントロールをしっかり行い落ち着いて話せるよう支援する
- 結果ではなく過程を重視してコミュニケーションを図る
- 話がしやすいリラックスできるケアを組み合わせる
利用者さんとの会話が長引いてしまい訪問時間を超過してしまう
Cさんはとにかくお話しすることが好きな利用者さんです。
訪問看護師が聴取したい内容にたどり着くにも時間がかかり、ケアもなかなか開始できない状況がありました。
時間超過してしまうことが度々あり、次の訪問にぎりぎりになってしまうため訪問看護師は悩んでしまいました。
お話し好きの利用者さんの場合、なかなかお話しを切り上げることができずに悩んでしまう看護師さんもいるのではないでしょうか。
利用者さんの身体状況や服薬状況を確認したいと思っていても、なかなか本題に入ることができず訪問時間を超過してしまうことも訪問看護にはよく見られる困りごとです。
このような場合には、利用者さんに聴取したい内容を箇条書きにして訪問開始時に提示してみることをお勧めします。
「今日○○さんに伺いたいことは、この3点です。」と提示することで、利用者さんも解凍しやすいと思います。
また、話が脱線してしまっても一覧にしておくことで本題に戻りやすくなります。
話が長くなりすぎてしまう時には、話を切り上げてしまっても問題ありません。
ただし、相手を不快にさせないよう切り上げた際の言い回しも会得しておくことをお勧めします。
- あっ!もうこんな時間ですね、○○さんとのお話しが大変興味深くつい聞き入ってしまいました。
- お忙しいのに色々聞いてしまって申し訳ありません。
- ○○さんのお話しはいつも楽しくてつい長居してしまって申し訳ないです。
- 続きがすごく気になるのですが、次の訪問に行かなければなりません。よかったらぜひ次回、続きを聞かせていただけますか?
このように、相手に不快な気持ちを与えず話を切り上げられるよう練習してみましょう。
- 聴取したいポイントを箇条書きにして提示する
- 話が長くなる場合には、話を切り上げても良い
- 切り上げた際には相手に不快な気持ちを与えない言い回しをする
終わりに
今回は、訪問看護でよくあるコミュニケーションの悩みと解決法について解説しました。
訪問看護の仕事について間もない場合、利用者さんを目の前にすると緊張してしまう看護師さんも多くいますよね。
なかなか普段通りに話せないと、悩んでしまうこともあるでしょう。
しかし、最初から先輩訪問看護師のようにスムーズなコミュニケーションを図れる人はほとんどいません。
反対に、日々の訪問でうまくいったコミュニケーション方法もあるはずです。
1件1件の訪問を振り返り、難しかったことだけでなく良くできたことも評価してみてください。
そのような積み重ねをすることで自信を持って利用者さんの前に立てるようになると思います。
日本看護サービスでは、利用者さんとのコミュニケーションを大切にして日々の訪問看護を行っています。
実際の業務の様子やスタッフの様子を見学したいと希望される看護師さんは、ぜひ問い合わせフォームよりお問合せください。