訪問看護の仕事に興味があるけど、一歩踏み出せずにいる看護師さんから、このような質問をいただくことがあります。
訪問看護は大変な場面もありますが、楽しいこともたくさんあります。
今回は、訪問看護が楽しいと感じた3つのエピソードをお伝えします。
訪問看護で働いてみたいと考えている看護師さんは、ぜひ参考にしてください。
訪問看護が楽しいと感じたエピソード3選
私は訪問看護に勤めて7年になりますが、振り返ると本当に数多くの利用者さんと関わらせていただきました。
訪問看護に初めて足を踏み入れた時は、不安が強く自身の不甲斐なさに情けなくなってしまうこともありました。
しかし、ここまで訪問看護を続けることができたのは、利用者さんとの関わりから得た喜びや楽しさのおかげであったと感じています。
病院や施設では味わうことができなかった「生きること」や「活かすこと」、すなわち利用者さんの生活を支える看護が、訪問看護の現場には在ります。
そんな利用者さんとのエピソードをお伝えいたします。
エピソード1.病状コントロールにより生活が安定した話
糖尿病の血糖コントロールがうまくいかず、訪問看護の利用に至ったAさんという利用者さんがいました。
Aさんは認知症もあり、服薬は不定期になっており、食事療法は自己判断で行っている状況でした。
訪問看護では、まず処方された服薬を定期的に服用できるよう支援していくことを目標としました。
Aさんが好むものを聴取し、Aさんが好きな猫や好きな色で装飾したお薬ケースを準備したところ大変喜んでくださったのを覚えています。
それから徐々に服薬の飲み忘れは減少し、受診時の血液検査値の改善も見られるようになりました。
食事についてもイラストで示したパンフレットを用意し、適切な食事量や選ぶと良い食品をお伝えすることで、少しずつ意識していただけるようになりました。
目標の血液検査値を達成したときは、思わずハイタッチをして喜びを分け合いました。
今後もお付き合いは続きますが、Aさんが可能な限り自分の家で元気に過ごせるように支援していきます。
エピソード2.難病の利用者さんの在宅生活を支えた話
訪問看護を利用する方の中には、人工呼吸器を使用して生活する方もいます。
Bさんは、進行性の難病により呼吸状態が悪化し、気管切開をして人工呼吸器を使用し退院することになった利用者さんです。
気管切開部からの吸引や、経管栄養が必要でありご家族への介護指導や一緒に関わる訪問介護のヘルパーさんとも連携を図る必要があります。
また、生活するために必要な物品の確認や療養環境の配置の助言など、退院してすぐに始まる療養生活に不備がないよう関わっていきました。
医療機器を使用しての介護生活には不安はありながらも、訪問看護は24時間対応でトラブルに備えることでご家族とともに利用者さんの安全を守ることができました。
進行性の難病であるため、退院後もADLの変化やコミュニケーション方法の模索を続ける必要があります。
療養における意思決定や、Bさんが望む生活を尊重したケアの組み立て、Bさんが持つ力を最大限に活かすためのリハビリテーションなど支援は現在も続いています。
家で生きるために必要なことを幅広く捉える視点が必要である面は大変さを感じることもありますが、Bさんの笑顔を見るととても楽しい仕事だとやりがいを感じずにはいられません。
この先もまた困難に直面する時もあると思います。
しかし、これまで築き上げた私たちとBさん、ご家族との道のりがありますので、きっと乗り越えられると信じています。
エピソード3.最期の時を望む場所で迎えられた話
訪問看護では、「家で最期まで過ごしたい」と望む方が多くいらっしゃいます。
病院と異なり、24時間看護師が近くにいるわけではありません。
看取りに向けて、日々状態の変わる利用者さんを見守ることができるようご家族を含めた支援が必要となります。
Cさんは、末期の状態と診断され在宅療養を希望された方でした。
介入当初は痛みがあり、ほとんどベッド上での生活でしたが、訪問診療と訪問看護が連携し疼痛コントロールを図ったことで痛みの緩和ができました。
痛みから解放されたことで、寝たきりだった日々から徐々にADLが回復し、車椅子に乗って過ごせるようになりました。
入浴もなかなかできていなかったため、車椅子に乗って久しぶりに足浴をしてみることにしました。
たっぷりのお湯とCさんが大好きだと話す入浴剤を使い、そっと足を入れると「あー、本当に幸せよ。生きてるって、幸せね。」と涙を流しました。
その言葉の中に、これまで痛みや病気と闘ってきたCさんの苦悩やこれから先に訪れる最期の時への想いを感じ、私も涙が出てしまいました。
Cさんが最期までの日々をどのように過ごしたいか、じっくりと意思決定支援を行いました。
また、同居しているご家族の不安が強くならないよう状態の変化や症状に合わせた説明を行い、低下していくCさんの状態を見守ることができるよう支援しました。
在宅療養を続けた3ヶ月後、Cさんはご家族に見守られながら永眠されました。
ご家族と共にエンゼルケアを行い、Cさんのこれまでの療養を振り返り、笑い合った日々や涙した日を思い出しながらCさんが大好きだった入浴剤を入れたお湯で足浴をしました。
Cさんは、私自身の看護師としてのあり方や人生を見つめ直す機会を与えてくださったように思います。
これからも訪問看護師として、誰かの支えになりたいと思えた関わりでした。
終わりに
今回は、訪問看護が楽しいと感じたエピソードを3つ紹介しました。
訪問看護に少しでも興味のある看護師さんは、ぜひ一度現場で訪問看護の楽しさを実感していただきたいと強く思います。
このほかにも、訪問看護での関わりでやりがいを感じたことはたくさんあります。
事業所の見学に来てくださった際には、ほかのエピソードもお話ししながら訪問看護の仕事について説明させてくださいね。
日本看護サービスでは、事業所の見学やご質問を随時受付しております。
訪問看護師として、あなたと一緒に働ける日を心からお待ちしています。