コミュニケーションが上手い、下手など、もっと上手くコミュニケーションができたらと悩む方も多い。私もそのうちの一人である。好きなことを話しているのは楽である。言いたいことを言っているのは、コミュニケーションではない。マネジメントの父、ピーター・F・ドラッカーは、相手の関心事に耳を傾けることであると述べている。ある事例を紹介します。教員時代、学生の受け持ち患者さんが階段から落ちて頚部骨折で入院した。手術が近づくにつれて、不安と不眠を訴えるようになった。しかし、なかなか解消されずにいた。ある時、ふとした会話から一人暮らしであった患者には、ペットの犬(ポチ)が居ることがわかった。どうやらそのペットの事が気になっていたのである。すぐに、民生員と保健所に連絡し無事確保したことを伝えたら、その後は一切の不安や不眠は無くなり、無事手術を終えた。その人にとって大切なこと、気がかりなことに耳を傾けることこそ、コミュニケーションの神髄がある。先日、訪問看護契約に同行させてもらった。利用者はもちろんのこと、家族への関わりには、相手の関心事に焦点が置かれながら会話がなされていた。「辛い時には、しんどいと、えらい。と言っていいんやでと、何も我慢することはないの。あなたの家でわがまま言ってくださいね」と、背中を撫で下ろしながら、やさしくごく自然に話しかけている姿は、まさにその姿は、相手の関心事に集中された、スーパーコミュニケーションが実践されていると確信した一場面であった。